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​著作権侵害に関する裁判の概要

2007年11月27日に発行された『熱血‼コロコロ伝説 Vol.9』において作者である私(前田のえみ)に無許諾で、漫画『みらくるドラクル』と『みらくるドラクル』に使われたカット(イラスト)数点を掲載し、『熱血‼コロコロ伝説』の表紙に『ミラクルドラクル』とカタカナで誤表記されていた件で、令和4年の7月に小学館に対して民事訴訟を起こしました。

代理人(弁護士)から、その件に関しての小学館の言い分を

書いても構わないと言われましたので、ここに記したいと

​思います。

​【小学館の主張】

小学館は『みらくるドラクル』の無許諾掲載に対して

「黙示の許諾(承諾)」があったと主張しています。簡単に

言うといわゆる “暗黙の了解” ということです。

“承諾は取っていないが、掲載の申し込みをすれば承諾してくれるはずだ” という考えのもと掲載に至ったという主張であると思われます。

『熱血‼コロコロ伝説』はコロコロコミック編集部とは別部署となる「てれコロ・マルチ企画室」が企画、編集等を担当しており、編集長はコロコロコミックで編集経験のあるT氏(小学館の答弁書には名前が書かれていますが個人名は伏せます)が編集長で、当時20代から40代までのかつてのコロコロ読者向けの企画として発行されました。

【ここから小学館の答弁書を一部、引用】

"本シリーズの掲載作品に選ばれることは、既にコロコロコミックで公表済みの作品一話分を読者層や体裁がコロコロコミックとほぼ同等の媒体へ再掲載することを意味する。

即ち作家が当初掲載を許諾した形態の範囲内の再掲載であり、掲載料の支払いもなされて経済的にも利益であり、かつ人気の証明にもなるのであって、こうした形態の再掲載を拒否する理由はないと考えられていた。

※T編集長(すでに退職している)は、本シリーズの企画実地にあたり、コロコロ編集部で交流のあった作家に企画の趣旨を説明したところ歓迎しこそすれ拒否された例がなかった。そこで、一部声をかけられなかった作家もいたものの、上記事情から、各作家から、本シリーズの掲載作品への再掲載について黙示の許諾が成立していると考えた。

実際に、本シリーズにおける著作物利用について、これまで

原告以外の作家から異論を述べられたことはない。"

つまり、ざっくり申し上げますと

①再掲載であり、②掲載料が支払われ人気の証明になり、③編集長と交流のあった作家は反対せず、④私以外の作家から異論を述べられていないので、無許諾掲載をしても構わないし、著作権侵害にはならないと考えて掲載した…という主張になります。

​​ただし、私の他にも無許諾で掲載された作家がいるかどうかの真偽は不明です。

(※この著作権侵害に関する裁判には、T編集長を始めとした重要な人物が何人か関わっていると思われるが、小学館がこれらの人物にヒヤリングしたという記述は答弁書に全くありません。「○○だと思われる」という書き方ばかりで「本人に確認したところ…」などという記述は一切ありませんでした。

私はT編集長が全く関わっていないとは思いませんが、もっと直接的に著作権侵害をした中心人物がいると思っています。おそらくT元編集長にこの裁判のことは知らされておらず、退職しているのをいいことに全ての責任を被せられているのだと思います。

​【再掲載料未払いの件について】

『熱血‼コロコロ伝説』に漫画が再掲載された2007年、私は漫画家時代に使っていた銀行口座をすでに閉じていた為、小学館は存在していない口座に原稿料を振り込んでいました。それに対する小学館の主張の一部です。

 

“詳細は不明であるが、この返金情報はてれコロ・マルチ企画室の責任者であるT編集長に認識されなかった(小学館の答弁書より引用)”…だそうです。

​しかし、小学館側から提出された資料によると、この『熱血‼コロコロ伝説』は紙媒体で発行されたあと電子書籍としても配信されており、その際にも2回にわたって私に掲載料が振り込まれ、当然それも振込先不明で差し戻しになっております。それに対しても “詳細は不明” であり “同じくT編集長が認識していなかったから未払いのままである” という主張です。

小学館・入出金ファイル1_page-0001_edited.jpg
※小学館から裁判に提出された資料。紙媒体の稿画料に加えて、二回に渡り電子配信に対する稿画料が支払われている。この資料を見るまで私自身は『熱血‼コロコロ伝説』が電子版として配信されていたことも知りませんでした。
※小学館から提出された、紙媒体の『熱血‼コロコロ伝説』の稿画料。“振込先不明のため組戻し”と記載されている。これに対して“詳細は不明”であり“なぜか経理から当時の編集長に伝えられなかった”という主張であった。要するに「誰にも責任がない」と、責任の所在を曖昧にしておきたいのだろうな…という印象を持ちました。
​責任があるとすればもうすでに小学館を辞めているT編集長であり、この”退職した編集長”に全ての責任を被せているようでしたが、小学館側は本人に真偽を聞くこともなく、机上の空論ばかりの主張をしてきました。
※小学館から提出された電子配信版に対する稿画料の資料1。ここに記載されている先生方も「黙示の許諾」で再掲載されたのだろうか。
※小学館から提出された電子配信版の稿画料に対する資料2。支払い実行後、「口座不明」と記載してある。
※小学館から提出された電子配信版の稿画料に対する資料3。
もう存在しない口座なのでそのまま掲載。「住所不備あり要修正」とある。紙媒体と電子配信版と合計三回、支払いと組戻しを繰り返しても、“なぜか”経理から編集部のほうへ連絡がいかなかったそうです。

​【漫画以外のイラストやカットに関する著作権侵害について】

小学館は『熱血‼コロコロ伝説』の表紙や雑誌内に描かれた(掲載された)イラストのサイズが小さいので著作権侵害にはあたらない…という主張をしています。

​絵が小さいから主人公の『ドラクル』であると判別できないから…という意味のようです。(※参考画像A)

【『みらくるドラクル』を『ミラクルドラクル』とカタカナ表記した件について】

​※「表紙題号は、僅か8文字の文字列であり、創作上の表現ではなく漫画作品を識別するための事実に関する記載というべきである(小学館側の答弁書より引用)」という主張です。タイトルは創作物ではないので著作権侵害には当たらないと仰っています。

しかし、題号の改変は同一性保持権侵害(著作権20条)にあたるというのが、こちらの主張です。

(※だったら是非とも『ドラエモン』って雑誌の表紙に印刷して同じ言い訳をしてみてほしいもんですね。“僅か5文字の文字列”なんだから著作権侵害じゃないはずだろ?w

向こうの答弁書を読むと突っ込みどころばかりで、怒りを通り越して笑えてくるときもありました。)

以上です。細かい部分はだいぶ端折りましたが大まかにこのような感じだと捉えていただければ間違いないです。

小学館は全体を通して「無許諾掲載は認めるが、著作権侵害には当たらない」という主張で一貫していました。​

去る2023年3月24日に小学館と和解が成立いたしました。

実は、私はなぜこの著作権侵害事件が起きたのか大体のところの見当がついています。きっかけになった出来事…という言い方が正確だと思いますが、その“きっかけ”から続く小学館の対応、内部事情がこちらの想像以上であったのだろうと考えています。

裁判でも主張しましたが、事件当時にはまだ、私の現住所を知っている編集者がいたはずです。なぜ言い切れるのかと言うと当時その方とは、ごくたまにですが、個人的に連絡を取っていたからです。

何らかの形で私に連絡を取り「事後承諾という形になってしまい申し訳ございません」と謝罪一つで済む話です。連絡を取れば振込先を聞くことも出来るわけですから一石二鳥だと思うのですが…。なのに、三回も無視をするというのは常軌を逸した行為だと言っても過言ではないと思います。小学館の主張である「なぜか経理から編集部に連絡がいかなかった」などということが一度ならず三度もある訳がありません。小学館という大企業の経理がそこまでボンクラだとは到底、思えません。

よほど私に連絡できない、したくない理由があったと考えるほうが理にかなっているのではないでしょうか。

様々な側面から考えて「なんとなくこういうストーリーなんじゃないか」と思う部分もあるのですが、例え判決まで進めたとしても小学館側が本当の事を言うことは絶対にないだろうな、と判断して和解に応じました。

それに、裁判において判決まで粘るのはあまり得策ではありません。「双方の主張が出揃いましたね。和解したらどうですか?」という裁判官の申し出を蹴っても心証が悪くなるだけであまり良いことはないようです。

結局小学館も、ほぼこちらの主張を認めた形での和解だったので、さすがに小学館側の弁護団も「著作権侵害ではない」という主張は、いくらなんでも無理があると思っていたのではないでしょうか。

嘘ばかりつかれるのは舐められている証拠です。さすがに若いころとは違い「“良い人”というのは“相手にとって都合が良い人”」だということがわかっています。なんでもかんでも「いいですよ」と、ヘラヘラと笑って許す訳にはいきません。

裁判をしたからといって何一つスッキリとはしませんが、「悪いことをされたら黙ってはいませんよ!訴えますよ!」という牽制が出来ただけでも良しとしなければいけないのだと思います。

そして、この件に関してはこちらには一切、非が無いということだけは記しておきたいと思います。

小学館で漫画家をしていた時にも色々なことがありましたがここまでのことをされるなんて…と、正直、私自身にとっても、大変ショックな出来事でした。

(コロコロコミックでは『みらくるドラクル』コミックス第三巻の表紙のカラー原稿を紛失される(謝罪なし)、学年誌では読者からのファンレターを渡さない…など、色々ありすぎて全部は書けない)

最初は答弁書を全部公開するつもりでしたが、下手するとこちらが名誉棄損などで訴えられる可能性があると知り断念しました。

大阪地方裁判所にはまだ裁判記録が残っていますので、答弁書を読めば事件の経緯がわかりやすいと思います。

​弁護士の勧めで小学館側にされたハラスメント行為なども記しました。小学館での漫画家生活で、17年も精神科に通うほど心が病んでしまったので、この裁判はフラッシュバックが再発してとても辛かったです。

モラハラされたことによるPTSDには今でも悩まされていますが、裁判をしたことで著作物で商売をしている小学館が著作権に対してここまでいいかげんな考え方をしているということが改めてわかったので、裁判はして良かったと思っています。

ですが、弁護士も不思議がっていましたが、マスコミからの取材はありませんでした(弁護士によると、各種マスコミには「裁判を担当する記者」がいて裁判所に常駐しているそうで、毎日「今、どんな裁判が行われているのか」をチェックしているそうです。なので「“小学館が著作権侵害した”という事件に飛びつかないのはおかしい、と言っていました)

一件だけ読売新聞の記者から取材を受けましたが、上司から「小学館を批判するなんて…云々」と反対されたようで記事になることはありませんでした。

まあ、考えてみれば小学館の超有名漫画が読売テレビでアニメを放映しているので、私みたいな末端の漫画家の事件など取り上げることは不可能ですよね…。

​ただ、「日本のメディア間の癒着っぷりって凄いんだな」と絶望的な気分にはなりました。

読売新聞に限らず、小学館に対抗するマスコミなんて、いないんだと思います。だから小学館も、何をやっても許されるという感覚になっているのかもしれません。

 

【著作権侵害について】

(意外に重い!著作権侵害の罰則)

https://copyright-topics.jp/basic/penalty/

 

(著作権侵害の時効・著作権を侵害された被害者が取るべき対応策)

https://itbengo-pro.com/columns/3/

以前、YouTubeにアップしていた「小学館提訴の動画」を一時的に非表示にした理由をYouTubeのコミュニティから転載しました。

​※参考画像A
​※『熱血コロコロ伝説Vol.9表紙』
※無許諾掲載された
『みらくるドラクル』
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